チンギスハーンにイタズラ書きをされた報復はデモだけでは済むはずがない      内モンゴルに住む私が直面している危機感

中国の内モンゴル自治区に住む私が2018年2月23日に東京のモンゴル大使館前でデモが起こったことを知ったのはその3日後とかなりタイムラグがありました。

知り合いから携帯にデモの様子を送りつけられ、何事かとネット検索しようやく事態を把握した次第です。

今回のこの事態は日本では収束に向かっているのかどうかはっきりわかりませんが、本国ではまだ炎上の途中です。

ここでは大勢のモンゴル民族の間でただ一人暮らす日本人のわたしが、本国、からこの事態のことについて御伝えします。


デモの原因のあらまし

私も子供時代に読んだことがあるマンガ雑誌コロコロコミックに掲載されたものが事件の発端です。

3月号の中の「やりすぎ!!!イタズラくん」というマンガ作品の中でモンゴルの英雄チンギス・ハーンの額に男性器をデフォルメした落書きがされた1コマが問題になりました。

これを見たモンゴル人達が自分たちの英雄を侮辱していると感じデモ行動を起こしたようです。


モンゴル民族がなぜ怒る本当の理由

モンゴル民族がチンギスハンに落書きされたことでなぜこれほど怒るのか多くの日本人にはわかりずらいかも知れません。

この人物はモンゴル大帝国の初代帝王だということを中学校の歴史の授業で習った以外の知識は一般人にはないことでしょう。

しかしモンゴル人にとってチンギスハーンはただ国を統一した英雄に留まらずそれ以上の存在とされていることがあります。

現地で多くのモンゴル人に囲まれ暮らしているとわかるのですが、チンギスハーンをただの先祖ではなく神としてあがめ崇拝している人がとても多いのです。

内モンゴルではチベット仏教を信仰している人が数多くいますが、その人たちの仏壇の隣にはほぼ必ずと言っていいほどチンギスハーンの肖像が置いてあり月に数回、もしくは毎日御線香を立てられ祭られています。

中には仏壇より高く壁掛けされている家庭もありその崇拝心は相当なものだと思いました。

またモンゴル民族人口のほぼすべてがチンギスハーンに対してこのような念をもっていると言ってもいいと私の妻がいっていました。


日本では国を統一した人であってもこれほど英雄扱いされ、崇められることはありませんから、この感覚がわからないのも無理はありません。

でももし自分の尊敬する人がたとえマンガの中であっても同じようなことをされたら腹が立つのは理解に難しくないはずです。


以前にあった2つの同じような事態と報復行動

実は以前に中国内で今回のことと同じようにチンギスハーンが侮辱されるような事態があったと聞いたことがあります。

一つは玄関マットのデザインにチンギスハーンの肖像を利用されたことで、これがモンゴル民族は侮辱されたと受けとめたようです。

玄関マットは当然地べたに置かれ、足で踏まれるものですからこれではチンギスハーンの顔を踏みつけることになり、モンゴル人たちは商品の販売をやめるよう玄関マットのメーカーに抗議したそうです。

もう一つは内モンゴルに旅行に来ていた漢民族の一人がとった行動です。

モンゴル旅行には草原の中に建てられた移動式住居ゲルの中で食事を楽しむプランがよくあります。

そのゲルの中にはモンゴルの伝統工芸品や生活用品が飾られていますが、必ずあるのがチンギスハーンの肖像画。

旅行者の男性の一人が食事中に楽しむお酒に酔ってやったことと思われますが、なんとズボンをおろしこの肖像画に男性器を押当てたのです。

これが動画としてとられSNSで拡散し、モンゴル人たちの怒りの発端になりました。

私もその時点で現地にいましたが、だれもかれも何たることかと激しく憤慨している場に呆然としました。

この時私もようやくモンゴル人にとってチンギスハーンがどのように位置づけされているのか知り、モンゴル人たちの反応は過激すぎるわけではなく、それ相応のものだと感じました。

その後モンゴル人の中のその筋の人々がその報復として13億人もいる漢民族の中から当事者を見つけ出し、その人の男性器を切り取ったとのことでSNS上で公表されています。

そしてその報復行動をした人は逮捕されたようですが、罪に問われることを承知で行動を起こしたと聞きました。


日本人としての危機感

今回のことがあり、現地で暮らす私は肩身がせまくなるのは当然です。

いったいこれはどういうことかと会う人会う人に問いただされるのは目に見えています。

しかしそれよりも心配なのが日本人に対するイメージの変化です。

外国人に対してのイメージはメディアや人の話により鋭角化されやすいもので、例えば中国人の日本人に対するイメージは「礼儀正しい、温厚である、節度がある」などですが、これがどの日本人にもあてはまり、しかもその程度は最高レベルだと考えている人ばかりです。

そしてこのイメージが今回の事態によりストーンと急降下してしまうのではないかと懸念しています。

元々が高い位置にあった重い石が落下し、大きなダメージを与えるかのごとく日本人の良いイメージが粉砕されてしまうのではないか心配です。

元横綱も今回のことをうけTwitterで「大好きな日本人がこんなことをするなんて」と嘆いていますが、これに共感する人も多いでしょう。

日本に対するイメージが急にダウンしたという人は少なくないはずですし、私の生活もそうですがこの事態をきっかけに日本と友好的なモンゴルとの関係にひびが入らないかと心配です。

たったマンガの一コマが原因ですが、これを社会に送り出した作者や出版社のことはとても残念に思います。

チンギスハーンに対して理解が浅かったのかもしれません、それかただ子供の読むマンガと思ったのかもしれません。

でもこんな低俗な理由で日本人のイメージが落ちるのは私にとってはとてもやりきれない思いです。

「礼儀正しい日本人でも、こんなことするんだ」と多くのモンゴル人に思われたことを考えると、涙が出るほど悔しく思います。

もう起きてしまったことは変えようがありません。

これ以上事態が悪化することなく収束に向かうことを祈ります。

内モンゴルの草原からでした

スポンサーリンク

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です